お酒コラム

Sake Column

日本が誇る伝統的発酵食品「日本酒」に長年携わってきた老舗の酒屋ならではの観点で、日本酒に関するさまざまな知識・情報を発信。毎回いろんなテーマで更新しています。

2021.03.24

その9 鉄は苦手なんです。

 

「酒造りの命」と言われる水ですが日本酒造りに使われる水は、川を流れる水ではありません。地面にしみ込んだ水が、長い年月をかけて地中深くにある礫層(れきそう)にたどり着き、濾過され、清められた水で、大地と時間との協力で、磨かれた水こそが日本酒造りには最適なものとなるのです。
日本酒の成分の約2割はアルコール、糖分、アミノ酸などですが、残り8割は水です。
清浄な水は日本酒造りに欠かせないものです。
日本酒を造るためには、仕込むお米の量の約10倍の水が必要になります。
水に含まれる成分の中でもっともさけたいのは、鉄分。
鉄分は麹菌がつくるデフェリフェリクリシンという物質と結びついて、赤橙色のフェリクリシンという物質になり酒を着色させるため、できるだけ少ない方が良いのです。
酒造用具にも酒が触れる部分は鉄を使わないようにしているほどです。
醸造用水の条件は、水道水の水質基準よりも厳しいものとなっています。細かい数値を挙げてみますと、鉄分の場合、水道水では0.3ppm以下ですが、醸造用は0.02ppm以下の水でなければならないとされているのです。
先にも述べたように、水は清酒の成分の8割以上を占め、その成分が酒質に大きく影響します。
特に原酒の割水では、びん詰め直前に製品としてのアルコール度数まで薄めるため、水を3割以上も加えるのです。
水の成分の良し悪しが酒質に直接影響するのはいうまでもありません。
環境活動を行っている蔵元もたくさんありますが、自然と共存をしていかなければ酒造りはできないのです。
名水のあるところに、銘酒ありなのですが、これからは銘酒のためにも名水を守り続けていかなければならないのです。